4人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ますと、懐かしい天井が見えた。
紗枝(サエ)を包む布団の匂い、寝返りをうつと軋む2段ベッド、カーテンの隙間から漏れる光……。
この光景すべてが、紗枝が過去に失ったものだった。
紗枝は2段ベッドの下の階を覗いた。
寝相の悪い兄の雅樹(マサキ)は、足をベッドからはみ出させて気持ちよさそうに眠っていた。
「……お兄ちゃん……」
今はもう見ることのできない顔に、紗枝の胸が熱くなった。
なぜなら、彼は今日……交通事故で死んでしまうのだから……。
最初のコメントを投稿しよう!