『過去』――2

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 今日から3連休になる。  休日でも、父が家にいることはあまりなかった。  病気になった母を看病している間さえ、あまり顔を見なかったほどだ。  ただ、看病をしていないのではなく、紗枝が来られないような昼間に来ているため、行き違いになってしまっているだけなのだが。  何回か母に、父の職業を聞いたことがあった。  母は、「科学者」とだけ言った。  何の研究をしているかは、母も知らないのだそうだ。  トーストを食べながら、どっか遊びに行きたい、と言った雅樹に、紗枝は反対した。  いつもなら、雅樹と一緒になって騒ぐはずの紗枝に、2人とも驚いていた。  まさか、出かけた先で雅樹が事故に遭うなど、誰も予想していないのだ。告げたところで信じないだろう。  父も、事故現場にいられなかったことを深く後悔していた。  しかし、仕事中は携帯の電源を切っているらしく、今日も呼び出すことができなかった。
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