―― バレン ――

16/16

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「ええ、お気になさらないで、向こうでも安月給でしたし」 あっけらかんて言いながら、ねぇ、とマリーと頷きあう。 その横顔を見て、ふと耳元に気づく。 「──君は人間じゃないのか?」 「あらお気づきになられました? はい、私は鼠族の半獣ですの」 問いかけるバレンに、照れ臭そうに青みがかった灰色の耳をいじる。 そうして見ると、確かに長いスカートに隠れた肌色の尻尾も裾の方に確認できた。 鼠族と言えば、獣族の中でも特に力の弱い一族。 人間のマリーと共に奉公していたというのも珍しくない話だろう。 「……バレン様は狼族だから、私みたいな弱い鼠族なんか嫌いですの……?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加