11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「ぼ……坊っちゃん……?」
恐る恐るといった声。
その懐かしい声音に、ばっとバレンは後ろを振り向く。
そこには──。
「……マリー?」
小さくみすぼらしい体が、ふるふると震えている。
そこには、実の父親よりも、誰よりも慕っていたメイドのマリーがいた。
「ぼっ……坊っちゃん~!」
勢いよく抱きつくマリー。
人間の彼女には五年という歳月は長かっただろう、皺や白髪が多く見られる。
しかし、小柄な老婆は、子供のようにバレンの胸にすがり、わんわんと子供のように泣く。
その姿に、バレンの双眼からも涙が溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!