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「……驚いたな……なんで屋敷がそのままなんだ?」
豪華な物など一切なくなってはいるが、ほこりもなく最小限の家具が置いてある、懐かしい居間を見渡しながら呆然とする。
「俺達が収容されている間に、全て王国が没収したのかと思ってた」
「最初はそうでしたが、王国の役人のレディアンヌ様が、坊っちゃんが住むお家がなくなるだろうって、また戻してくださったんですよ」
ニコニコ笑いながら無邪気に言うマリー。
そんな馬鹿な、と呆気にとられたが、事実はそうなのだろう。
げんに今、マリーと二人で屋敷の居間でお茶をすすっているのだから。
「戻してくれたのは屋敷だけだろう?ならこの家具は?
見慣れない物だが……」
「それは屋敷にいた使用人達が、出てくる坊っちゃんの為にかき集めてくれたんですよ!
皆、坊っちゃんの帰りを楽しみに待ってたんです」
その言葉に胸がジンときた。
雇い主がいなくなり、仕事がなくなった彼らは、かなりの苦労を虐げただろう。
だけで、そんな罪深い自分などに───。
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