紅い頭巾にまんまるお月さま

2/33
80人が本棚に入れています
本棚に追加
/548ページ
西の空に太陽が沈み、茜色が辺りを包む 東の空は紺に染まり、星が瞬き始める刻 森の一角、 茜色に染まった色とりどりの花が生い茂る その中に、一匹の狼がいた 大型犬より少し大きい位の大きな身体に、 栗色の毛並み、瞳はアイスブルー、 余り見かけない変わった色をしている その狼は花畑を見ていた 狼が見つめる先には人が横たわっていた 金の長い髪と漆黒のドレスを花畑に広げ 白い肌が見え隠れする手足を投げ出し 長い睫毛を伏せ、静かに息をしている 「…こんな所で、何してるの?」 さわさわと木々が揺れる音の中 不意に聞こえた声 少年と青年の狭間、高くもなく低くもない そんな声だった その声に反応し、閉じていた目を開ける 碧の瞳で声の発せられたであろう方を見る そこにいるのは狼だけだった 「…お腹すいたの」 しかし 彼女-アリスは迷わず狼に話し掛けた .
/548ページ

最初のコメントを投稿しよう!