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『ねえ、お兄さん。となり、座ってもいい?』
「え、いいけど、空いてるのにわざわざここに座る必要無いだろ」
『いいじゃない、1人で飲むのはつまんないし』
女は長い髪をハラハラとなびかせながら隣の席に座った。
正直、変な女だなと思った。
「あのさ、アンタ誰?」
『やだな、人に名前を聞く時は自分からでしょうが』
この時、オレはかなりいぶかしい顔をしていたと思う。
女はそれでいてニコニコと笑っている。
ハア…かなわない。そう思ったのか、オレは素直に名刺を差し出した。
「こういうモンだ」
『白石玉次…サン?』
名刺を出すのはいい気がしない…ガキの頃から白玉なんてあだ名を付けられていたし、生来の顔の丸さがそれを引き立てるからだ。
『フリーの記者さんなんだ』
女は、名前のことなど気にせず笑って話を続けた
『あ、私の番かあ…私の名前は小春、間宮小春。みんなには、[はる]って呼ばれるよ』
「はる?」
オレの声が上擦った。
『何?』
「いや、オレが探してるのも…はるって女なんだけど」
『そうなんだ!まさか私じゃないよねぇ…』
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