48人が本棚に入れています
本棚に追加
その声は虚空へと消え、誰の返答も無く時間が過ぎる。
だが、
「………………チッ…」
舌打ちと共に一人の人物が、公園近くの林から姿を現す。
若い、20代前半の様に見える、真新しいそうなスーツを着こなした男だった。
「流石じゃないか。何時気付いた?」
「…最初からだよクソボケ。テメェみたいにあからさまに殺気バラまいてりゃ猿にも分かる。」
面倒臭そうに少年が答える。
男は少し緊張したような引き攣った微笑を浮かべ、片手を上げる。
すると男が出て来た草むらからさらに6、7人の屈強な男が現れる。
男はヒステリック気味の乾いた笑い声を上げながら言う。
「……わるいなぁ……お前に死んでもらわねぇと……組での俺の立場がねぇんだ。」
「…………。」
少年は10人近くの凶器を持つ男達に囲まれながら、一つの事を考えていた。
(……コイツらに狙われる理由は……まァ…面倒臭ェからどォでもいい。恨みなんざ腐る程買ってきたしなァ…)
今までの自分の人生は悪行だらけだった。
人を殺す事だって珍しくも何ともない。
少年が考えていたのはそこではない。
じりじりと差を詰めてくる男達に少年は、
グチャリと裂けるような笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!