35人が本棚に入れています
本棚に追加
衣知羽の言葉通り、キツネ目の男が食事を運んで来た。
かろうじて言葉を交わすことは許されているようだったが、向こうが快く思っていないのは明らかだ。
その様子を、沙弥と孝太は押し入れから窺っていた。
「隠れて」と衣知羽は言ったが、これが正解だったのだろうかと孝太は疑問だった。
山から降りる道を聞くチャンスを、みすみす逃してしまったのではないか。
沙弥が掛かったという罠だって、動物の狩りのための物だったのではないか。
「もう、いい。三人で食べよう」
押し入れが開けられる、衣知羽だ。
衣知羽は、泣き出しそうな顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!