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「神のつかい子の陽、呪われし子の陰、双方を持って、子を浄化する!」
神官の声に呼応するように、村人の奇矯な叫びが上がる。
男の声、女の声は、孝太の耳をつんざくほどだ。
暗闇で数は把握できそうにないが、提灯の数以上の人間がいると思われた。
振り上げられた神官の腕が下ろされと同時に、鐘の音が時に緩やかに、時に激しく打ち鳴らされる。
波打つように強く甲高いその音は、何かを訴えるかのようだ。
それは心臓の鼓動か、村人の鳴らす鐘か、もう判断がつかない。
嫌なバックグラウンドミュージックだ。
もう赤ん坊の声は聞こえない。
小さな身体から、だらりと紐のようなモノが垂れ落ちている。
網膜が像を結んだ光景は、頭のどこかで予想していた。
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