35人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
鐘の音が次第に弱いものになり、恐らくは終焉を迎えようとしているのだろうと孝太は思った。
やばい。
このままでは見付かってしまうのは明白だった。
「ちっ」
孝太は舌打ちし、地に縫い付けられたように動かない足に苛立ち、太腿を拳骨で殴り付ける。
馬に鞭打つように、ただ動け、と祈った。
カーーーン、と一際大きく鐘が鳴らされたと同時に、びくんと身体が跳ね、力が戻った気がした。
いとも簡単に立ち上がり、そのまま振り返らずに、走る。
最初のコメントを投稿しよう!