神のつかい子

2/7
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
誰かが、すすり泣いている声が聞こえた。 その声に誘われて暗い眠りから目を覚ますと、側頭部が痛んだ。 針金で内部をかき混ぜられるような鋭い痛みに、孝太は顔を歪めた。 寝そべっていた床から身体を起こすと、一倍の痛みに視界が回る。 何とかバランスを取り、光の差し込む方に目をやると、沙弥が部屋の隅でうずくまり嗚咽していた。 「……えっ……えぅ、うぅ……っ」 「どうした?沙弥……」 孝太は一瞬で、多数の全身を戦慄させるような最悪な展開を予想した。 沙弥が泣きじゃくるなど、珍しいことだったからだ。 「コ、タ……」 顔を向けた沙弥の目に、驚きと怯えが走った。 沙弥の視線は孝太に固定されている。 孝太はその視線の先を見て、心臓の中に氷水を注がれた気がした。 着ていたシャツにはべっとりと、血が付いていたのだ。    
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!