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シャツを捲り手で身体をどれだけまさぐっても、傷など存在しない。
しかし、市販の肉や魚を捌いたとは思えない、毒々しい赤は確かに異臭と共に染み付いていた。
それらは酸素に触れたためか、黒に近付きつつある。
「ねぇコタ、それ、どし、て……?」
沙弥の言葉で、冷や汗が背筋を流れた。
心臓が重く、それでも早く脈打つ。
あの“神事”以外に、これだけの血液が付着するような原因が思い付かない。
現実だと信じたくない気持ちが、孝太の口を重くしていた。
沈黙が広がり始めた室内。
濃い血の臭いに、意識が飛んでしまうほどの吐き気がする。
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