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「私が話そう」
いつからいたのか、一人、入り口に立っていた。
薄暗がりの中、白い髪と赤い目がぼんやりと浮き上がって見える。
顔の細かな造形は分からないが、先程孝太が目撃した“神事”の相方、千代羽であることは間違いなかった。
沙弥は息を飲んで、しかし尚も状況を理解しようと努めている。
「聞きたいことは、何だ?」
「何だ、だと……っ」
孝太が怒りに奮えていても、顔色ひとつ眉ひとつ動かさず、多少演技がかった仕草で礼をした。
「申し遅れてしまったな。私は神のつかい子、千代羽」
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