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「千代羽さま、あの、これは……」
「黙れ」
千代羽がじろりと睨むと、少女は可哀想なほど身を縮こまらせた。
同じ顔、同じ声をしているというのに、千代羽には見る者を引き付ける凛としたカリスマ性がある。
それが、神のつかい子の証であると言われれば、きっと信じてしまうだろう。
奇異の念を抱かせる場所での断言、それは洗脳。
「気付いているかとは思うが、そなたらは招かれざる客人。この村での傍若無人な態度や行動は差し控えて頂きたい。そして──我らの”神事“を探るなど、言語道断」
千代羽の緩くカーブした口は微笑みを浮かべていたが、赤い瞳にはそのかけらも見えなかった。
「女の怪我が治り次第、出て行け。それまで外へ出ることは許さない」
そうそう、と千代羽は顔だけでこちらを振り返り、言った。
「村人には乱暴なのが多いからね……注意した方がいい」
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