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「衣知羽、外行く」
「どうしたの?」
沙弥は空気すら変わるのにも敏感となっていた。
「何かあった?」
言い知れぬ不安を隠そうともせずに、少女にすらすがる。
「仕事する。サヤ、来る?」
すっくと立ち上がり、余りにも危機感のない物言いで尋ねた。
「おい衣知羽、それ……ヤバいことはないんだな?」
「花、集める」
衣知羽には、与えられた仕事があるという。
それは夕刻を過ぎてから、“神事”の際に使う花を集めること。
その花はすぐ裏手に栽培されており、もとより隔離された場所であるここに、村人が来る心配は、ほとんどないようだった。
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