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身の危険を案じながらも、目玉だけで沙弥を探す。
部屋の隅に、壁に向かって寝転ぶ、見慣れた後ろ姿。
再び衣知羽に目を戻すと、無抵抗な彼女の首筋には刃が当てられていた。
白い首に、赤い筋が一本、不細工に流れた。
「千代羽……てめぇ……!」
喉がひどく乾燥していて、声も掠れた。
唾を飲み込むと、咳き込んだ。
同じ造形をしており、同じ血の流れる双子の少女を目の前に、孝太は衣知羽と千代羽に対して、全く正反対の感情を抱いていた。
「お前、……」
千代羽の目が孝太のそれと繋がった。
殺される。
「……お休み」
頭を撫でる手の平を感じると同時に、孝太は再び意識を手放してしまった。
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