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――27階メインフロア
「あぅ……ひ、ひぃぃ!」
短く悲鳴を上げた男が、手を使って必死にあとずさる。
腰が抜けてへたりこんだ状態ではそれがもっとも早かった。
しかし、爆発の火炎を背に迫る、黒いシルエットの歩みはそれを上回る。
「答えてください……イクスはどこですか?あなたはそれを知っている」
若い女性の声、しかしまるでデバイスが話す時のような機械音が声色に混ざった。
「し、知らない!イクスなんてもの、俺は知らないぃ!」
コキリと首を傾けたシルエットはまた、ゆっくりと元の位置に戻す。
そして銅像のように固まっていたシルエットの右手が、ギュン!と空を切った。
「ぐあぁあぁ!」
首元を掴まれ、高く持ち上げられた男がジタバタともがく。
「では、イクスの場所を知る者は?答えてください」
「知らないぃ!ホントに知らないんだぁ!」
泣き声でわめく男に、シルエットはしばし動きを止める。
そうこうしている内に、みるみる男の顔が青くなっていく。
「おいおい、“マリアージュ”そいつを勝手に殺しちゃ駄目でしょう」
――ヒュンッ!と男の前を風が切ると、男の体躯は重力に従って床に投げだされた。
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