全ての始まりはファンタジー

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雨のせいで地面が泥濘るんで、足がとられそうになるが、なんとか堪えて走り続ける 私は走りながら、木々の合間から見える空を睨み付けた 黒々と厚い雲から、睨み付けに反応したように雷鳴が轟き、雨脚はさらに激しくなる 「雨…」 走りながら私は一人呟いた 雨は水。私の味方になる だけど 「何処に行った!?」 「!」 比較的に近くから怒鳴り声が聞こえ、聞こえた声とは真逆の方に駆け出す 速度をあげようとするが、体のあちこちが悲鳴をあげて転びそうになる 「ッ…!」 私は奥歯を噛み締めて痛みに堪え、体制を直してまた駆け出した 今の状態では速度をあげても、然程スピードは上がらない 満身創痍な今の状態ではこれが精一杯だ 痛みで上手く集中も出来ず、能力を使う事すらままならない それでも、今まで見付からないでいられるのは、天候と辺りに生い茂る木々のおかげだろう それでも、少しずつ追い詰められている。何時かは見付かる こんなところで、私は破壊される訳にはいかない 「そっちにはいたか!」 「いません!」 「けして逃がすなよ!」 雨の音に負けない怒号が耳に入った しかし、正確な方向が分からない それがいやに焦燥感を煽り、記憶にある恐怖を感じる 走り続けて、息もあがり体力の限界も感じるやがては走る事すら出来なくなるだろう 今だけはこの体が恨めしい。この記憶が憎らしい 「ッ…誰か」 喋る余裕など無いのに、言葉が口からもれる 必要も、求めても、そんな気もないのに、追い詰められた記憶がその言葉をもらす 「誰か…助けて…」 自分の口からもれた言葉に泣きそうになる 涙など出ないのに、そう思った 惨めさに思わず足が止まりそうになった時 「いたぞ!!」 「!?」 声の元など確認しない。そんな余裕も猶予もない 瞬時に声とは真逆に走りだして─── 足元が崩れた 「!?」 気付いた時には、私は宙に浮いて、いや、落ちていた 視界の端に捉えたのは、暗く底が見えない地獄と、私を掴みとろうとして空を切った死神の手 どちらにしろ私に待つのは… 私は───
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