其ノ三[滴り]

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賑やかな繁華街の隅に、小さな店があった。 ある夜、その店の主人が後片付けをしていると、背後からぽたん、と音がする。 雨漏りでもしたかと振り返るものの、天井にそれらしきシミはない。 音のした床を注意深く見ると、赤い液体が一滴こぼれていた。 辺りには赤いインクなどなく、もちろん天井からそんなものが落ちてくるとは思えない。 どこか引っ掛かりを覚えたが、手近にあった布で拭えば簡単に液体は消えた。 次の日、店は不審火を出して全焼する。 次に開いた店も数年後に同じく火事をだして閉店となった。 焼け残ったコンクリートの柱から、白骨死体が見つかったのはそれから数日後の話だった。 さぁ夜も深くなって参りました。 お次はどなたがお話下さいますのでしょう?
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