其ノ一[身代わり]

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あるところに男の子がいた。 彼は重い病気で、長く入院していたが病状は悪化する一方。 両親も覚悟をしてか、暗い話題は持ち込まず、彼の前では無理矢理明るく努めた。 そんな親を見れば辛いなどと言えない男の子は、花壇の花や通りすがりの猫、はたまた木にとまる鳥を眺める日々が続いた。 やがて季節が巡り、暖かくなってきた。 だが男の子の身体は弱っていく。 もう病院内を歩くことも出来なくなり、窓から見える外が彼の唯一の世界になった。 そしてある夜、彼は熱を出す。 医師達の足音、両親の泣き声。 部屋の中には機械の無機質な音が鳴り響く。 彼の意識は闇の中。
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