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ふと彼は目を開けた。
不思議なことに辺りは真っ暗。
苦しかった息も今ではなんともない。
これはどうしたことかと身体を起こそうとした時だった。
「…ほほほ」
聞こえたのは笑い声。
それは絹糸のような細い音。
「…なんと儚いものよのう」
「我等も同じようなものぞ」
「ほほほ」
頭上から降るように落ちてくる声が増える。
三人?四人?
暗闇に目を凝らしても何も見えない。
そうこうしているうちに声はどんどん増えていく。
「ほほほ」
「ほほ、ほほほ」
「まこと、か弱い生き物じゃ」
「まことに」
「ほほほ」
彼は不思議と、姿の見えない声を怖いとは思わなかった。
綺麗な心地良い音が会話となって彼を包む。
これは天使だろうか、それとも死神だろうか、と彼は心で考えた。
昔読んだ絵本に描かれていた死神は、黒いマントに大きな鎌を持っていたのを覚えている。
自分の首など簡単に切られてしまうと恐怖で泣いたのは懐かしい思い出だった。
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