其ノ二[夢]

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それ以来彼女は例の夢を見なくなった。 やがて本人も、記憶を埋めるように夢を忘れた。 数年後のある日、彼女の祖父の体調が急変する。 連絡を受けた彼女は急いで自分の車をとばした。 可愛がって貰った祖父の死に目に会おうと、ハンドルを握りしめる。 焦る彼女と裏腹に時間は進んでいった。 信号が変わり車を発進させる。 長い大通りが続いていく。 ふと視界に入った看板に見覚えがあった。 祖父の病院に車で行ったことはない。 この道も初めて通るはずだ。 しかし、そこから目に入る景色は知っている。 前を見ながら彼女は頭の隅で考えた。 何の変哲もない広い大通り。 何故か背後が怖い。 彼女はじわりと汗で濡れた手を見た。 そしてゆっくりと後ろを振り返る。 一拍のち、対向車線をはみ出した車は彼女を乗せて無惨にひしゃげた。 炎で赤く染まった煙が辺りに広がる。 周囲で入り乱れる人の声は、彼女にはもう聞こえなかった。 私の話はこれで終わります。 お次はどなたが?
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