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それ以来彼女は例の夢を見なくなった。
やがて本人も、記憶を埋めるように夢を忘れた。
数年後のある日、彼女の祖父の体調が急変する。
連絡を受けた彼女は急いで自分の車をとばした。
可愛がって貰った祖父の死に目に会おうと、ハンドルを握りしめる。
焦る彼女と裏腹に時間は進んでいった。
信号が変わり車を発進させる。
長い大通りが続いていく。
ふと視界に入った看板に見覚えがあった。
祖父の病院に車で行ったことはない。
この道も初めて通るはずだ。
しかし、そこから目に入る景色は知っている。
前を見ながら彼女は頭の隅で考えた。
何の変哲もない広い大通り。
何故か背後が怖い。
彼女はじわりと汗で濡れた手を見た。
そしてゆっくりと後ろを振り返る。
一拍のち、対向車線をはみ出した車は彼女を乗せて無惨にひしゃげた。
炎で赤く染まった煙が辺りに広がる。
周囲で入り乱れる人の声は、彼女にはもう聞こえなかった。
私の話はこれで終わります。
お次はどなたが?
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