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「心配しなくていいよ。最上階のスイートはさすがに無理だけど、この位なら俺にも手が届く」
言いながら一条先輩はバッグを椅子に、コートと上着をクローゼットにかけた。
「一条先輩…」
「それともう一つ、とっておきのプレゼントを君に…」
とっておき?
不意に部屋の明かりが消える。
と同時に、僕は広めの窓の向こうに目を奪われた。
「うわ~っ、綺麗!」
地上20階から眺める都会の夜景。
輝く宝石を散りばめたような光の洪水が、暗闇の中、遥か遠くまで続いている。
まるで天空から地上を見下ろしているかのようだーー
窓に張り付いて、その光景に魅入られていると、背中に温もりを感じた。
「俺のプレゼント、気に入ってくれた?美咲」
大きな手が僕の手に重ねられる。
「はい。すっごく素敵です!」
振り返ると一条先輩の笑顔が真近にある。
「この一年、忙しくてちゃんと会えなかったからな。クリスマスも仕事だったし…」
一条先輩は、僕のためにこの夜を計画してくれていたんだ。
口数が少なく、誤解してしまいがちだけど、優しさに満ちた行動は昔のまま…。
2010.01.11-
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