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突然の訪問者の出現で、一条先輩と僕のバレンタインデーは予測不能な展開になった。
程なく二宮先輩が頼んだルームサービスで、グラスやオードブルが運ばれて来て、部屋はすっかりパーティームードに。
二宮先輩がシャンパンを開け、グラスに金色の液体を注ぐ。
「じゃ、久々の再会を祝して乾杯しよう」
ご機嫌な二宮先輩に比べ、一条先輩は不機嫌極まりない表情。
仕方ないか…
僕も最初は戸惑ったけれど、二宮先輩程の人なら相手に不自由しないはずのイベントデーなのに…。
理由はどうあれわざわざ会いに来てくれたのだ。
僕はグラスを取り、二宮先輩の『乾杯』の声と共に高価なシャンパンを口に含む。
「…美味しい!香りも味もフルーティーで…」
「だろ? さぁ、どんどんいこう、今夜は無礼講だよ、美咲。それから独りでひねてるお前もな、すぐる」
『ハァ~』という深いため息を吐いて、一条先輩も渋々仲間に加わった。
「…ったくお前にはいつも振り回されっぱなしだよ」
「それが楽しいんだろ?」
「どこが?!…ったく計画が台なしだ」
毒づきながらも一条先輩の声音には刺がない。
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