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「でも僕は会えて嬉しかったです。高校時代に戻ったみたいで」
「そうだな…」
フッと表情を和らげ、一条先輩は窓の外に視線を移す。
「雪だ…」
ちらほらと、暗い空から真っ白な雪が降りてくる。
「もう日付は変わってしまったけれど、ホワイトバレンタインですね」
やっと一条先輩と二人きり。
「あっ、チョコレート…」
不意に僕のプレゼントを思い出して、一条先輩はテーブルの上の箱を開けた。
「わっ!…甲斐だな」
驚く一条先輩の声で、僕も箱の中を覗く。
そこにはハートの形の右半分が無くなった僕の手作りチョコが。
「あいついつの間に…。今度会ったら絶対ただじゃおかねぇ」
どこまでもしたたかな二宮先輩。
僕は怒るより、むしろ可笑しくなった。
「一条先輩、チョコレートならまた作りますよ」
「…色々悪かったな、美咲」
自分の計画も邪魔されたのに、二宮先輩の分まで謝る一条先輩。
そんな先輩が大好きだ。
「一条先輩、僕からのプレゼント、改めて受け取ってください」
僕は、半分になったチョコを一かけら口に含み、そのまま一条先輩にキスをした。
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