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吐く息が白く、頬に当たる風も氷のように冷たい1月。
私立葵高校では、短い冬休みが過ぎ、新学期を迎えていた。
僕が3年生の一条先輩と学校で会えるのもあと僅かーー
そう思うと一日一日寂しさが募る。
写真部のある廃墟の一室で、ぼんやり窓の外を眺めていると、二宮先輩が入って来た。
「どうしたの美咲、元気がないな。風邪?」
心配そうな顔で僕の額に自分の額をくっつける二宮先輩。
二宮先輩の過剰なスキンシップにはもう慣れた。
キレイすぎてドキドキしちゃうけど・・。
「あの、一条先輩は?」
「あいつなら、進路指導の片倉先生に呼ばれてる。多分お説教」
一条先輩の進路…
「あいつも馬鹿だよな。推薦でT大楽々行けるのに。わざわざ三流大の工学部一般受験するなんて」
「一条先輩には夢があるんですよね」
「いかにもあいつらしいオタク趣味の…ね」
辛口批判しながらも、本当は誰より一条先輩を理解しているのは二宮先輩なのだ。
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