願いのかたち

3/15
前へ
/107ページ
次へ
  吐く息が白く、頬に当たる風も氷のように冷たい1月。 私立葵高校では、短い冬休みが過ぎ、新学期を迎えていた。 僕が3年生の一条先輩と学校で会えるのもあと僅かーー そう思うと一日一日寂しさが募る。 写真部のある廃墟の一室で、ぼんやり窓の外を眺めていると、二宮先輩が入って来た。 「どうしたの美咲、元気がないな。風邪?」 心配そうな顔で僕の額に自分の額をくっつける二宮先輩。 二宮先輩の過剰なスキンシップにはもう慣れた。 キレイすぎてドキドキしちゃうけど・・。   「あの、一条先輩は?」 「あいつなら、進路指導の片倉先生に呼ばれてる。多分お説教」 一条先輩の進路…   「あいつも馬鹿だよな。推薦でT大楽々行けるのに。わざわざ三流大の工学部一般受験するなんて」 「一条先輩には夢があるんですよね」 「いかにもあいつらしいオタク趣味の…ね」 辛口批判しながらも、本当は誰より一条先輩を理解しているのは二宮先輩なのだ。   
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加