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二宮先輩は今にも崩壊しそうな椅子に座り、古びた長机に肘を付いて語り始めた。
「昔、ある街にとびきり可愛い美少年が住んでいた。彼はひどく病弱で、医者にも長くは生きられないだろうと宣告されていたんだよ」
「かわいそうな人ですね…」
「その美少年には近所に幼なじみが居てね。そいつが無口で無愛想で無表情。だけどムカつくほど頭が良くてスポーツ万能の、むっつりアニオタ少年だったんだ」
むっつりアニオタ少年?
す、すごい表現。
でもなんだか覚えがあるような…
「そんな美少年が小学5年生の冬、新型インフルエンザに感染、肺炎を起こして入院してしまうんだ」
「…そんな」
「それを知ったむっつりアニオタ少年は、病弱な美少年の早期退院を願って、自分の大好きなみそ汁絶ち、つまり願掛けを始めたんだよ」
「願掛け…どうしておみそ汁なんですか?」
「そいつは大の和食党でね。3食ご飯とみそ汁がないと禁断症状が出るって位好きなんだ。…で、むっつりアニオタ少年は考えた。
ご飯の方を我慢したら空腹で自分も倒れてしまうかもしれない。だからみそ汁の方にしようって」
クスッと、僕は不謹慎にも笑ってしまう。
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