番外企画

3/17
1873人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
洞穴は溶岩流の後なのか高さも横幅もあり、岩肌も外とは違い溶けたような滑らかさをもっていた。 パイソン改の銃口に魔法で明かりを灯しながら歩くこと十数分、芹耶の前に大きな空洞と小さな湖が現れる。 かなりの広さの空洞らしく、手元の明かりでは奥まで見ることができない。 芹耶は構築式を組み直し明るさを調節すると天井に向かって照明の魔法を撃ち出す。 撃ち出された魔法は天井に当たると一際明るさを増し、空洞全体を照らし出した。 そこは三階建ての建物ほどの高さと体育館ほどの広さの空間。 中央には小さな湖とその中心には古びた杖が一つ刺さっている。 周囲を見渡すが魔物の気配はない。 「どう見ても怪しいよな~」 湖の中心に刺さる杖に一人呟く芹耶。 湖の大きさは10メートルほどで、ちょうど中心辺りに杖だけが浮くように刺さっている。 空洞を見渡すが通路はなく、この空洞が行き止まりであることは間違いない。 「魔物はいなくて、杖一本があるだけか…」 漫画ならばこの杖を抜くと封印が解けてなんちゃらな展開になるのだろうと考えた芹耶は迷うことなく杖を引き抜きに掛かった。 湖の水深は芹耶の腰ほどの深さだったので特に問題もなく杖の下まで辿り着く。 当然杖が刺さっているのだから、そこだけ水深が浅くなっていて地面に刺さっていると思っていたのだが、予想を裏切り杖は直接水面に刺さり直立している。 「怪しさ全開だな」 近くで見た杖は、頭部分に15センチ程の魔石とおぼしき玉が付いており鈍く輝いていた。 呟き杖の下部分に手を掛ける。 そのまま両手で杖を水面から引き抜くと穏やかだった水面に細波が走る。 芹耶は湖から上がり何が起こるか離れて注視していた。 水面の細波は次第に大きなうねりとなり、杖が刺さっていた部分を中心に水が竜巻状に盛り上がると同時に腹の底に響くような声が聞こえる。 『我の眠りを醒ます者、永遠の安息を以て謝意としよう…』 声の主を捜そうと周囲を見渡すが辺りには誰もいない。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!