人を思ふ月

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「キツネよ、名はもらえたか?」 「神様…はい。月、という名をもらいました。」 「そうか、良い名だ。」 「あの、僕はこれから どうすれば…?」 「そこの雲の上が、お主のベットだ。そこから、ただ地を見ててくれれば良い。」 「えっ?」 「お主はもう、月になったのだ。地から見れば、お主はどの星々より光り輝いて、地を照らしている。だから、お主の仕事は、ただ地に居る者たちを見守っててくれれば良い。」 「それだけで良いのですか?」 「ああ。頼んだぞ。キツネ、いや、月よ。」 こうしてキツネは夜空を照らす月となった。 その真実を知る人間は咲子だけ。 いつしか、月の美しさに地の者たちは魅了された。 しかし、月はずっと空の上から咲子を想っていた。 月はいつまでも、天から地を照らし、人々を見守り続けるのでした。 ーーー 人思ひ 小さきキツネ 月となる ーーー      完
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