人を思ふ月

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キツネは走った。 一刻も早く咲子に逢いたくて。 キツネはただ、咲子の家まで、無我夢中に走った。 コーン…コーン…(咲子さん…) 山の麓でキツネは鳴いた。 コーン…コーーン(咲子さん!) キツネは、咲子の家の前で鳴いた。 「おや?キツネ君、こんな夜更けに、どうしたんだい?」 コーン…(会いに来ました) 「なんだい?」 キツネは人間の言葉が上手く話せず、戸惑った。 「咲、子、さん、に会いに、来まし、た。」 「え?キツネ君、話せるの?」 「神様に、少しの、時間、だけ、話せ、るように、してもらい、ました。」 「そうかい。」 「咲子さんに、会いに来、れるのも、今日、で最後、だから…僕は、別れを言いに、来ました。」 「え?それって…」 「僕は、空へ行くことに、なりました。神様の元で、働きます。」 「そうかい…寂しくなるね…。」 「僕に、会いたくなったら、夜空を、眺めてください。」 「星を見るのかい?」 「いいえ。僕は、星になる訳では、ありません。」
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