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◆
保健室。
保健医の予想通り、3つある保健室のベッドは空きがあと1つしかない。
季節柄、風邪が流行っているということもあるのだが、集会が面倒だから不調を装ってサボりにやって来る生徒もちらほらとうかがえた。
もっとも、本当に具合の悪い生徒のためにも残りのベッドは死守しているわけだが。
お陰で室内は普段より賑やかになってしまっている。
「……先生」
もそもそとベッド脇のカーテンから一人の女子生徒が顔を出す。
「どうしたの、東山さん。お腹痛いの?」
「いいえ……。だいぶ楽になりました」
「そう。今はお腹にくる風邪が流行ってるからね。もし辛かったらお医者さんに診てもらってね?」
「大丈夫です。……あの、お手洗い行ってきてもいいですか」
「ああ、どうぞ。ごめんなさいね」
申し訳なさそうに苦笑する保健医にぺこりと頭を下げると、女子生徒――詩織は立ち上がった。
雑談していたサボり組たちが急にゲラゲラと下品に笑い出して、保健医に「静かにしなさい」と散々注意されているのを一瞥して、詩織は保健室を出た。
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