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具合の悪い生徒に配慮して、保健室のすぐ目の前には個室トイレがひとつある。
洗面所に入ってドアを閉めると、さっきまでのうるさい笑い声はいくらか消えて、心地よい静寂が訪れた。
……ああ、うるさかった。あんなところじゃ眠れやしない。なんだか頭も痛くなってきた。
(少しの間だけここでぼーっとしてようかな)
詩織は洗面台の鏡の前に向き直ると、静電気で乱れた髪を手ぐしで直し始めた。
しばらくして、詩織は保健室のドアの取っ手に手を掛けた。
「あれっ、詩ぃちゃん?」
聞き慣れた声に振り返ると、そこには、照明のせいだろうか、顔色があまりよくない様子の七瀬が立っていた。
「七瀬ちゃんも保健室?」
「うん。なんかちょっとだけ調子悪くって」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
苦笑する七瀬と何気ないおしゃべりをしながら、二人は保健室に入っていった。
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