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ロンパリドカは何処を見てるかわからない目でルーキーを見据え、静かに呟いた。
「見ねえ顔だな……何処から来た?」
「か、亀戸です」
「お前……今日がどんな日か知ってるか?」
「し、知りません」
「ガァァ!」
ロンパリドカはいきなり目を大きくひん剥き、両手の平でルーキーの顔をハサミあげ、ルーキーの顔にキスをせんばかりに自分の顔を近付け、口を大きく開け吠えた。
「ブ、ビェ!」
ルーキーはロンパリドカに両手で頬を押し潰される様に挟みあげられ、口をおちょぼにしながら悲鳴をあげた。
その様子を見て常連の一人が肩を揺らしながら笑いをこらえ、傍らにいる仲間に小声で囁く
「また、テルさんの成りきりが始まったよ、こないだ金曜ロードショーでマッドマックスやったろ、あれ、そのワンシーンの真似だぜぇ」
テルとはロンパリドカの名前らしい。2、3日前にTVで見たマッドMAXと言う映画の影響を受けている様だ。
テルはルーキーの顔を両手で挟んだまま、後ろにいる大勢のギャラリーに向かって叫んだ。
「おい!今日はお前らに残念な知らせがある」
「今日で千葉のカラスの走りは見納めだ、奴はこの世界から、足を洗う」
そういうとテルはルーキーの顔を両手で挟んだまま静かに目を瞑り天を仰いだ、完全に自己陶酔の世界に入っている。
「えぇぇぇぇ!」
ギャラリーはテルの一人芝居は無視し、テルの口から出たニュースのみに驚いた。
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