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優しくなんかないから
誤解しないでよ
久しぶりに綱吉は一人で屋上で昼ご飯を食べていた。獄寺君はビアンキにポイズンクッキング片手に追い掛けられて、どこかに行ってしまった。
山本は部活の打ち合わせがあるのか部室で部員と食べると言っていた。ごめんなーと謝る山本を思い出してクスクスと笑う。
もうずっと誰かと昼ご飯を食べる日が続いていたせいか、一人で食べるのは新鮮だ。
「たまにはいいかなー…」
食べ終わった弁当を片付けころんと屋上に寝転がる。背中に当たるコンクリートがぽかぽかしていて心地よい。屋上には誰も人がおらず、程よい遠さから生徒の声が響く。
「ねむ………」
思わず欠伸をすると綱吉はうとうととまどろみの中を漂う。
そのまま眠ってしまいそうだ。背中のコンクリートも、優しい太陽も心地良い。それに傍らに触れる熱で風も寒くない。
傍ら?
綱吉は勢いよく跳び起きた。今日は一人で弁当を食べていた。隣には誰も居なかったはずなのに……
「やあ 起きたの」
隣には雲雀が居た。トンファーの手入れでもしていたのだろうか。布を片手に磨いている。ぱくぱくと口を開閉させているのをよそ目にその手は着々とトンファーを綺麗にしていく。
「君って本当に分からない。群れてるかと思えば一人だし、弱いかと思えばそうでもないし」
綺麗になったトンファーを片付けながらしみじみと雲雀は呟く。
「こうやって呑気に昼寝なんかして誰かに噛み殺されたらどうするの」
噛み殺す、という発想は貴方限定ですとは言えず綱吉はだらだらと冷や汗を流しながらすみません、と謝る。
「一人でこんな所で食べるくらいなら応接室に来るといい」
サラっと宣うので思わずはあ、と返事をしてしまう。してしまってから綱吉は自分の迂闊な返事に気付いた。しかし気付いた時には遅かった。
雲雀は じゃあ明日ね、と言って屋上から行ってしまったからだ。
「どーすんだよ………」
残された綱吉は頭を抱え込んで沈没した。
抜ける様な空は青い。
雲が、いくつか浮かんで
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