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「“ユメ”は“ユメ”だよ。知らないのかい?」
ユメ……?
眠ってるときに見る夢?
未来への希望を詰め込んだ夢?
すぐに消えてしまう幻想みたいな儚い夢?
「そのすべてだよ」
声に出していないはずなのに、突然アザラシが返事をしてきた。
「へ?」
我ながら女の子らしくない間抜けな声が漏れる。
アザラシはまた不満そうに垂れ目を必死で吊り上げて、怒った顔をしてる。
「今君が思い浮かべたすべての夢が、消されそうなんだよ。
それから。まだあるよね?」
そのすべての夢と。
それから……?
「まだわからないの?」
さらに不満そうなアザラシは、待ちきれないといった様子でさらに口を開いた。
「キミの名前は?」
その一言で、私はソイツの言いたかったコトがわかった。
私の名前は――
「ユメカ」
夢の華と書いて、ユメカ。
魔女が消し去ろうとしてるのは。
私自身でもあるってコトか……
鬱蒼とした森の中。
湿度の高いじっとりした空気が纏わり付いてきて。
背筋にじわりと嫌な汗が滲んだ。
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