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背中の気持ち悪い空気を振り払うように、頭をブンブンと振り回してた私に対して。
不機嫌そうなアザラシは言葉を続ける。
「わかってきたみたいだね。
ところで……キミがさっきから“アザラシ”と呼んでいるのは、もしかしてボクのことかなぁ?」
えっ……!
いや。一度も呼んでないよねっ? 声に出しては。
てか、さっきから……まさか。
「人のココロが、読めるの?」
恐る恐る尋ねた私に、ソイツはギロリと視線を流してきた。
「問題はそんなことじゃないんだよっ。大切なのはボクがキミのココロを読めるってコトじゃない。」
そして、斜めに傾けてた首をまっすぐに戻して
「大切なのはボクがアザラシなんかじゃないってコトと、ドーラって立派な名前があるってコトさ!」
と胸を張って続けた。
むしろ私にとっては名前なんかより存在自体が謎なんだけど。
そう思った瞬間、またもアザ……ううん、ドーラの鋭い視線が飛んで、私は急いで「ごめん!」と頭を下げた。
ココロが読めるなんて。
なんて厄介なんだろ……
私の夢だって言うなら、も少し私にとって都合のいい世界になってくれたらいいのに。
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