いたずらな運命

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やわらかな春風が白髪の後れ毛をもてあそび、光に舞い上がらせる。 老婆の水上しげは、公園のベンチのかたわらに寄り添って腰をおろす、介護ヘルパーの奈緒子に声をかけた。 「あんたさん、結婚はしてはりますんかえ?」 しげを見守りつつ、缶ジュース片手にくつろいだ様子の奈緒子が、はにかみがちに答える。 「あははは、してるにはしていましたけど、今はバツイチで二人の子持ちの独身ですよ」 「好いとる人は、おらんのかね?」 「そんなの……毎日の生活におわれて余裕ありません。 それに私、こんな体型ですし」 奈緒子はまん丸い指で、ふくよかな口もとを覆って、あははと声をだして笑った。 「あんたは、まだまだこれからの人やよ。 それに人生はあきらめたらあかん。 あきらめたら、うちのように一生ぬぐえない後悔を背負って生きていくことになるさかいな……」
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