戻れない日々

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銀行員である夫は几帳面で、何においてもまず仕事を優先させる人間で、家のことはすべてしげに任せっきりだった。 帰りは遅く日付が変わってからで、月に二度三度と出張を繰り返す。 三人の子供の世話と社宅での当番の仕事、奥様方との付き合い、家事全般に姑や親戚とのやりとりはすべてしげに任されていた。 勤めにでていた頃より忙しい毎日、矢のように過ぎゆく日々。 そんな合間のほっとできるわずかなひとときに、 夫の出張土産や移り住んだ土地の名物を、腹いっぱい食べることが、しげの唯一の楽しみであり気晴らしであった。 思えばこの食習慣が、のちに合併症を伴う糖尿病の原因となったのかもしれないが。
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