確信犯

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分かってるくせに。 どうしてこうなる。 私はただ隣で見ているだけで良かった。 ただの友達としてずっと一緒にいたかっただけなのに。 あの子と出会わなければ私は私でいられた。 「美音ちゃん。私ね、彼氏が出来たの!」 お昼休みになると必ず私のいる屋上にやってくる女の子がいる。 彼女の名前は青柳百合(あおやぎゆり)。 何故か私のことを一方的に親友と思っている鬱陶しい女の子。 いつもなら適当に相槌を打って聞き流す言葉に今日は何となく耳を傾けてみた。 ただ、それだけ。 「あのね、赤羽二中の日向野大希(ひがのだいき)くんって言うの! 前から気になってて昨日私から告白しに行ったんだっ!」 一瞬耳を疑った。 まさか、そんなことって。 百合が口にした名前は私が片思い中の幼なじみだった。 驚きのあまり息をするのを忘れしまいそうになる。 「それでね! 聞いてよぉ!」 嬉しそうに頬を紅潮させて話を続けようとする百合。 だが私の耳にはもう何も聞こえない。 あくまで平静を装い「そう」と短く言うとその場を去った。 あのまま百合の話を聞いていたら私はおかしくなっていたに違いない。 自分の為にあの場から逃げてきたのだ。
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