小さな刺客 -Death-

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 最近わかったことなのだが、こうしてイメージすれば、あの戦いみたいにわざわざ自分の影に手を突っ込むこともなく、影の剣を顕現させることが可能だ。  イメージってずるいよな。なんでも出来るんだからさ。  ぶちぶちそんなことを心中で呟きながら、少女の鎌を弾き返した。ギャリリと嫌な音と共に火花が散る。  少女は空中で何回転かしてから、ふわりと地面に着地した。その挙動はもう到底小学生と言えるものではなかった。  普通の女の子がこんな動き出来るはずがない。となれば、考えられるのは──  ──吸血鬼か、ハンターのどちらか……なのか?  しかしそれでは腑に落ちない。前者だとしたら納得がいかないし、後者だとしても組織からはもう狙われていないはずだ。  ではこの娘は一体何なのか、という疑念が頭の中でずっと渦巻いていた。  俺は剣の切っ先を少女へ向けながら、やや強めの口調で言う。 「誰だか知らねぇが危ないだろ! 殺す気か!」  すると少女は、少し──注視していなければ気付かない程度に、唇を噛んだ。表情もなんだか険しい感じに見える。  そして、蟻が鳴くくらいか細い声で、こう言った。  ──私だって、こんなことやりたくないのに、と。
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