小さな刺客 -Death-

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 彼女がなんと言ったのか、俺には最初理解出来なかった。  言い直そう。理解する時間すら与えてくれなかった。  何故なら少女が、再度ロケットの如きスピードで肉薄を掛けてきたからである。  小柄な体のせいか、スピードは脅威的にあるらしい。一気に懐まで入り込み、腹目掛け一撃必殺の斬撃を繰り出してくる。  喉が干上がる。咄嗟に左へ跳んだものの、完全に避けることは出来なかったようで、服の端が僅かに裂けた。 「あまり逃げられると手加減出来ません。お願いします。避けないで下さい」 「無茶、言うなッ!」  とんでもないことを言ってくる少女に、影の剣を投げつける。それは空中で形を変え、やがて投擲槍へ変貌した。  これも最近判明したことだが、影は俺の手から離れても、一定時間内なら、その質量を保っていられるようなのだ。  これによって、俺にも少しはミドルレンジの戦いも出来るようになった、ということになる。こんなに早急に使う羽目になるとは、思いもしなかったのだが。  しかし── 「無駄です」  その一言で、なんと影の槍が弾き飛ばされてしまった。もちろん、あの大鎌でだ。スピードだけでなくパワーも怪物級って、本格的に何者だよ……。
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