小さな刺客 -Death-

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 近、中距離共に向こうの方が有利……か。はぁ、あんまこれ使いたくなかったんだけどなぁ。  仕方ない、こうなったら奥の手だ。  俺は再度影の槍を生み出した。槍投げの選手みたいに、それを思い切り投擲する。  吸血鬼の化け物染みた腕力によって、爆発的な推力を得たそれは、黒の閃光となって、彼女へと猛進した。  小柄な少女は改めて鎌を両手で握り、槍を処理すべく構えを取る。また弾き飛ばすつもりらしい。  ……まさか俺も、愚直に何発も槍を放つつもりは毛頭ない。これは、罠だ! 「弾けろ!」 「っ!?」  俺の合図と同時に、槍が散り散りに別れた。一つは左方から、一つは右方から、一つは上方から。一つは、一つは、一つは……。  次第にそれらは少女の視界を埋め尽くし、俺の姿を完全に隠しきった。 「くっ……! 小賢しい、です!」  それもつかの間、影の弾幕はなんとも呆気なく切り裂かれてしまった。  俺の影はなかなかの耐久度を誇るが、こう分散してしまうとさすがに易々と破壊されてしまう。  まぁ、最低限の役割は果たしてくれた。あとは、俺の仕事だ。  少女に肉薄をかける。  大鎌を振り抜き、隙だらけになった彼女は、第二撃目を対処出来ないでいる。  右手に力を入れる。だが、影の武器は生まれない。以前の戦いで最後の切り札として使用した“もう一つのヴァンパイア・アビリティ”。 「拒絶するッ!」  俺がそう口にすると、右手に紫電が迸った。
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