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「あっ!?」
少女の手から大鎌が弾け飛ぶ。
俺のアビリティ“拒絶の右手<アンチ・マテリアル・ハンド>”の効果である。
他に、対象とした物体を破壊したりも出来るので、いっそぶっ壊してやろうとも思ったのだが、こんな近距離でそんなことをしたら、この娘まで吹き飛んでしまう。仕方がないので、今回は弾くにとどまったのだ。
しかし、脅威が去ったわけではない。女の子を傷付けるのは気が引けるが、大人しくなってもらうには致し方あるまい。
少し痛いかもしれないが、それは喧嘩吹っ掛けてきたそっちの自己責任ってことにしてくれよ!
空いた左手に影の剣を顕現させ、がら空きになった少女のお腹へ突き出す。
実はこれ、見た目の割りに質量はほとんどなく、それ故殺傷力は皆無に近いレベルまで落とした、言わば『なんちゃって剣』なのだが、ビビらずにはこれくらいやらないと気が済まない。
だが──
「ひ、ひゃぁああああ!!! ……あっ……」
剣がもう少しで届くかというところで、女の子はいきなり悲鳴を上げ、なんとあまつさえ卒倒してしまった。
糸の切れたマリオネットを連想させるような動きで、少女がよろよろと倒れ込んでいく。俺は慌てて剣をかき消し、その華奢な体を受け止めた。
え、これ、どういうこと!?
状況が全く理解できない俺は、身元不明なゴスロリ少女を抱え、深夜一人であたふたとするしかなかった。
俺はこの時まだ、次から次へと降りかかってくる試練に気付けないでいた。
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