小さな刺客 -Death-

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小さな刺客 -Death-

 目の前を、月光に照らされた真紅に輝く鎌が通り過ぎた。  比喩でも何でもない。本当に鎌が俺目掛け飛んで来たのである。しかも草刈りで使われるような鎌じゃなく、よくRPGとかで見る死神が持っている大鎌なのだから洒落にならない。  俺は体を翻し、後方へのけ反ることでそれをなんとか回避する。新体操の選手の如きバック転で、突然現れた刺客と距離を取ろうと試みた。  くそ、いきなり一体何だ!? と俺は空中で回転しながら舌を打つ。  現時刻、夜の11時。  なんでそんな時間に外をうろついているのかと言うと、まぁ長くなるから後から追々説明するとして、ともかく俺は自宅への帰路でこの謎の襲撃を受けているわけだ。  俺の名前は影山夜風。私立中禅寺高校に通う高校二年生である。  同時に、現段階では地球上で最も強い吸血鬼ということにもなっている。自分で言うのもおかしな話だが、これがまたマジなのだから仕方がないのだ。  とりあえず自己紹介はこれくらいにしておこう。今は目の前の脅威を何とかしない……と……?  俺は自分の目を疑った。こんなの、いつぞやどっかの誰かさんに自称吸血鬼宣言をされた時以来だろう。  何故なら、俺の目の前には、馬鹿でかい大鎌にはお世辞でも似合うはずのない、小学生くらいの女の子がいたからだ。
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