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ネズミ族の少年ははしごを頭の上まで持ち上げると、そのまま凄いスピードで走り出した。
「ちゃんとついてこいよー!?」
男の子は必死に追いかけた。
そして、
どてっ
転んだ。
――
男の子が裏通りの角を曲がると、少年は少し先にある鐘の付いた尖塔の前にいた。
「ここに入るぞ!」
そう言うと少年は尖塔の中に消えていった。
男の子も急いで中に入って行く。
建物の中は狭く、中央に太い柱があるだけだった。
「おい、お前先に登ってみろ」
柱の中には鐘まで続くはしごがある。
「うん」
男の子がはしごに手をかけた瞬間…
ドスッ
「うわ~~~!!」
上から何かが落ちてきた。気が付いたら、『何か』は男の子の上に乗っかっていた。
「はははは…なんてザマだ!」
「いたたた…」
ネズミの少年は笑っていたが、男の子は何が起きたのかも分からず、とても笑い事ではないようだ。
「だ…大丈夫クポ?」
…「え…?」
男の子は、起き上がって落ちてきたものをよく見た。
それは、猫に似たような姿に、コウモリのような紫色の羽を生やした不思議な生き物だった。
しかも、頭からぴょんと伸びた触角の先には、なにやら赤いもふもふした球状のものが付いていた。
「そいつはモーグリのクポっていうんだ。俺様の家来一号だ、よろしくしてやってくれ」
「よろしくクポ」
「よ…よろしく」
男の子はこんなに近くでモーグリを見たのははじめてのようだった。
するとクポはモーグリのことを簡単に話してくれた。
「さて、あまり時間がないんだ。早くしないと芝居がはじまっちまうからな。行くぞ!!」
クポの話が終わるとネズミの少年は、片手にはしごを持ちながら尖塔のはしごを登って行った。
「じゃあこの手紙を宛名のモーグリに渡してほしいクポっ」
男の子はクポから手紙を受け取った。
「いってらっしゃいクポ」
男の子は手紙をしまうと少年に続いてはしごを登っていった。
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