3.賑わう街

5/6
前へ
/13ページ
次へ
ネズミ族の少年ははしごを頭の上まで持ち上げると、そのまま凄いスピードで走り出した。 「ちゃんとついてこいよー!?」 男の子は必死に追いかけた。 そして、 どてっ 転んだ。 ―― 男の子が裏通りの角を曲がると、少年は少し先にある鐘の付いた尖塔の前にいた。 「ここに入るぞ!」 そう言うと少年は尖塔の中に消えていった。 男の子も急いで中に入って行く。 建物の中は狭く、中央に太い柱があるだけだった。 「おい、お前先に登ってみろ」 柱の中には鐘まで続くはしごがある。 「うん」 男の子がはしごに手をかけた瞬間… ドスッ 「うわ~~~!!」 上から何かが落ちてきた。気が付いたら、『何か』は男の子の上に乗っかっていた。 「はははは…なんてザマだ!」 「いたたた…」 ネズミの少年は笑っていたが、男の子は何が起きたのかも分からず、とても笑い事ではないようだ。 「だ…大丈夫クポ?」 …「え…?」 男の子は、起き上がって落ちてきたものをよく見た。 それは、猫に似たような姿に、コウモリのような紫色の羽を生やした不思議な生き物だった。 しかも、頭からぴょんと伸びた触角の先には、なにやら赤いもふもふした球状のものが付いていた。 「そいつはモーグリのクポっていうんだ。俺様の家来一号だ、よろしくしてやってくれ」 「よろしくクポ」 「よ…よろしく」 男の子はこんなに近くでモーグリを見たのははじめてのようだった。 するとクポはモーグリのことを簡単に話してくれた。 「さて、あまり時間がないんだ。早くしないと芝居がはじまっちまうからな。行くぞ!!」 クポの話が終わるとネズミの少年は、片手にはしごを持ちながら尖塔のはしごを登って行った。 「じゃあこの手紙を宛名のモーグリに渡してほしいクポっ」 男の子はクポから手紙を受け取った。 「いってらっしゃいクポ」 男の子は手紙をしまうと少年に続いてはしごを登っていった。 .
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加