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はしごを登り、塔の上に着いた。そこは鐘を鳴らすためのロープしかない狭いばしょだった。
「こっちだ!」
ネズミ族の少年は隣の屋根から男の子を呼んだ。
足元を見ると
塔から隣の屋根の間には、子供一人がやっと通れるくらいの木の板が渡してあった。
「早く来いよっ」
……
男の子は止まっている。
「おい、何やってんだよ。お前まさか高い所苦手なのか?」
男の子は黙って頷いた。
「大丈夫だよ、ここが高い所だと思わなければいいんだよ」
男の子はゆっくりと板に足をのせた。
板はみしみしと音を立てている。
隣の屋根まではほんの1メートルほどしかないが、男の子にはとても長く感じた。
どてっ
屋根に渡ったところで男の子は腰を抜かして尻餅をついた。
「ほら、びびってる余裕はないぜ」
やっとの思いで一つ渡ったが、休んでいる暇はなかった。
男の子が立ち上がるころには少年は頭の上にはしごを担ぎながら次の屋根に渡って行った。
男の子も必死でついて行く。
「ところでさ」
いくつかの屋根を越えたところで少年が不意に話し掛けてきた。
急に止まったので男の子は危なくはしごにぶつかるところだった。
「まだお前の名前聞いてなかったよな?」
「ボクはビビ…ビビ・オルニティア」
「そうか、ビビか。ちょっと変わった名前だな。俺ははパックっていうんだ。よろしくな」
パックはそう言うと、また屋根の上を走り始めた。
――「ふう…やっと着いたぜ」
パックは持ってきたはしごを城の塀に掛けた。
「さあ、ここを抜ければアレクサンドリア城だ!」
「うん」
二人ははしごを登り、塀の向こうへ消えていった。
お芝居の始まるほんの数分前のことだった。
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