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空がゆっくりと薄暗くなっていく中、それに反してアレクサンドリアの街は普段以上に賑わっていた。
というのも今宵は、王女ガーネットの誕生日を記念して、人気劇団タンタラスによる芝居「君の小鳥になりたい」
が上映されるのだ。
そのためアレクサンドリア以外のいろいろなところからもたくさんの人々、大半は貴族が街に来ているのである。
そんな賑わいの中、青い装束を着て、先がだらりと垂れた大きなとんがり帽子をかぶった男の子が、トレノから来た貴族たちの中をトコトコ歩いていた。
彼もまた、お芝居を見に来たのである。
どんっ
突然何者かが男の子にぶつかった。
男の子はその衝撃で転んでしまい、右手に持っていたお芝居のチケットを落としてしまった。
男の子が振り向くと、そこにはオレンジ色の帽子を被ったネズミ族の少年が、痛そうな顔をして尻餅をついていた。
「お前、ジャマなんだよ!!」
ネズミ族の少年は男の子に怒鳴りつけてそのまま走って行ってしまった。
『なんだよ~』と思いながらも男の子は立ち上がって帽子を直すと、チケットを拾ってまたトコトコと歩き出した。
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