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「見て見て~竜!りんご飴まであるよ~」
「………あぁ」
「わあっ!的当てなんかもある」
「…………」
杏……頼むから、そんな無邪気にはしゃぐなよ。
そんな可愛いお前の姿を飢えた野郎どもが鼻の下伸ばしてデレデレ顔で見てやがんじゃねぇか!
俺は杏の横を通り過ぎながらも、後ろ髪引かれるようにして杏を熱く見つめる輩<ヤカラ>どもを鋭い視線で牽制していく。
俺の女に指一本でも触れてみろ…ただじゃおかねぇからな。
「もう!竜ってば、さっきからずーっと怖い顔してるよ」
「………あ?」
誰のせいだと思ってんだ!
キレイ過ぎるお前のせいじゃねぇか!
………などと言えるハズもなく。
「………悪りぃ」
としか言えねぇ情けない俺。
「わ!お好み焼き食べた~い!」
そんな俺の切ない男心を知ってか知らずか、杏は俺の手をすり抜けて目当ての屋台に向け走り出す。
おいおい……勘弁してくれよ、まったく。
俺の大事なお姫様は……心配し過ぎる俺を余所に、どこまでも夏祭りを満喫しているご様子だ。
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