9142人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
一呼吸置き、改めて杏に向き直ったところで
「この前は....」
「竜、ずっと連絡取らなくてゴメン!」
俺の言葉を遮るかのようにして、杏が勢いよく重ねてきた。
「....へ?」
「....」
額がテーブルに付くんじゃないかというくらい頭を下げる杏。
???
いきなりの展開過ぎて思考が追いついていかない。
「ホント....ごめん」
「...」
しかし、その言葉とは裏腹に俺の顔を一切見ようともせず、杏の姿は明らかに何かを言い淀んでいるようにも見てとれた。
「....!」
咄嗟的に、かつ感覚的に良からぬことを想像してしまう。
こういう時の杏は決まって、俺の考える想定外...
いや、それ以上のことを言い出してくる。
過去の様々なトラウマが次々と走馬灯のように思い出されてきた。
「....な、何なんだよ」
そんな杏の様子に、思わずこちらも身構えてしまう。
【他に好きな人が出来た】
とか
【別れて欲しい】
何故か、こういう時に限って最悪なシチュエーションばかりが浮かんできては
俺を更に混乱させていく。
事業や会社のどんな重大なトラブルでも常に冷静沈着に対応出来るこの俺が
こと杏のことに関してだけは
何も考えられないほどに感情が揺さぶられ
情けないほどに気持ちが右往左往してばかりだ。
最初のコメントを投稿しよう!